豪州ワイン Part 3 1970年代のレストラン

豪州でワインを飲みだしたのは1973年頃でした。銘柄は限られていて例えば
McWilliams や Lindemans Bin23 とか Seaview Riesling だとかが広く知られていました。
今日のワインよりもアルコール度は高く、実力派だったという記憶があります。

それなりの構えのレストランでは、先ずバーへ案内されシェリーなどの食前酒や
ビールなどで食欲を高めます。その後頃合いを見て席へ誘われテーブル担当のウエイターから
食事のメニューを渡されます。ひとしきりメニューから選び終えたところで次にワインウエイター
がワインメニューとともにテーブルに来る、こんな具合でした。

男性は背広にネクタイ、女性は踵までの裾の、長いスカートで胸が大きく開いているような装いです。
21世紀の現在では、所謂スマートカジュアルが全盛でまるで異なります。
ワインはウエイターにあれこれ相談しながら、ということも多かったのです。今でこそ
赤でも白でも頓着なしに選ぶようになりましたが、当時は肉には赤、魚料理には白、ワインが
得手でない女性のためにはロゼを選ぶような硬直さがありました。
少し高価なワインを飲んだ時には、ボトルを空にせず少し残しておく。ワインウエイターの味覚を育て
次の機会には、ウエイターからおいしいワインを紹介してもらうといった麗しい気遣いをする客もいました。
赤の場合は、底に滓がありますから勿論ボトルの尻をはたくような飲み方はしません。

食事後は、Tia MariaやDrumbui そのほか Grand Manier などの食後酒とともにエスプレッソ
コーヒーを楽しむ、こんな感じです。支払いはそれぞれのウエイターに食事代、ワイン代は別々に、
でした。これは当然 Licensed Restaurant でのことですが、レストラン文化にも古き良き英国の影響が
未だ色濃く残っていたのです。

食事のおいしさですが、あの当時からは今のメルボルンはとても想像できません。それほど食文化は
低調でありました。その後のイタリアやギリシャそしてベトナムと東南アジアからの中国人の貢献で
豪州一といわれるメルボルンのレストラン文化が花開いています。そこには勿論日本人シェフたちの
活躍があったことも銘記されなければなりません。